企業分析NOTE

残業時間データの正しい比較方法|開示ソース別の違いと見落としやすい罠

就活・転職で企業比較をするときに最もよく見られる指標のひとつが「月平均残業時間」です。ところが、この数値はどのソースから取ったかによって10時間以上ズレることが珍しくありません。この記事では、残業時間データの出所による違いと、実態をつかむためのチェックポイントを整理します。


主な残業時間の公表ソース

1. 女性活躍推進法(DB)に基づく開示

従業員301人以上の企業に公表が義務付けられている「法定時間外労働の状況」です。厚生労働省のDBから取得でき、比較的信頼性が高いのが特徴です。ただし、全従業員の平均値であり、総合職・営業職など繁忙部署の実態はこれより大きくなるのが通常です。

2. 就活サイト・口コミサイトの自己申告値

マイナビ・リクナビ等の採用情報ページに掲載される「月平均◯時間」は、企業が自主的に申告した値です。法的な裏付けは弱く、採用PR上の数字になっているケースも多いです。

3. 有価証券報告書・人的資本開示

2023年から一部企業で労働時間・残業時間の記載が始まっていますが、まだ任意項目が多く、業界横断で比較できるレベルには達していません。

4. e-Stat 業種平均

総務省の毎月勤労統計調査に基づく業種別の平均残業時間です。企業個別ではなく業種単位のベンチマークとして使えます。個社データがない場合の「代わりに参照する指標」として使えます。


残業時間を読むときの5つのチェック

  1. 対象は全社員か、特定職種か:パート・契約社員を含む全社平均は、総合職の実態より低く出ます。
  2. みなし残業・裁量労働は含まれているか:固定残業代制度下では、実残業時間が申告残業と乖離するケースがあります。
  3. 持ち帰り・サービス残業の扱い:法的には労働時間ですが、統計に反映されない企業もあります。
  4. 同業他社との相対比較:業種により適正水準が違います。絶対値でなく業界平均との差で見るのが実践的です。
  5. 年度推移:1年だけでなく複数年の変化を見ると、働き方改革の本気度がわかります。

業種別 残業時間の目安(月平均)

業種平均残業(月)備考
情報・通信(SIer)25〜35時間プロジェクト繁忙期に集中
広告・コンサル30〜50時間繁忙差が大きい
銀行・保険10〜20時間近年は大幅に削減傾向
製造業(メーカー)15〜25時間工場勤務はさらに少なめ
建設・不動産25〜45時間現場・季節要因あり
インフラ(電力・鉄道)10〜18時間比較的安定

「残業が少ない」は必ずしも良いことか

残業が短いほど働きやすいと思われがちですが、固定残業代込みの給与体系では、残業が少ないほど実質時給は上がるのに対し、みなし分が無い企業では残業削減=手取り減少になるケースもあります。

年収と残業時間はセットで見るべき指標です。本サイトの「実質時給ランキング」では、年収と残業時間から1時間あたりの報酬を算出しており、時間あたりの効率でフェアに比較できます。