企業分析NOTE

男性育休取得率の正しい読み方|有報データで実態を見抜く

近年、多くの企業が「男性育児休業取得率〇〇%」を採用広告やIR資料でアピールするようになりました。しかし、この数字は定義の違いや計算方法によって大きく変わるため、額面どおりに受け取ると実態とかけ離れた判断をしてしまうリスクがあります。

この記事では、有価証券報告書および女性活躍推進企業データベースに開示される男性育休取得率の読み方と、企業の育休文化を見極めるポイントを解説します。


男性育休取得率とは何か

男性育児休業取得率とは、育児休業を取得した男性従業員数 ÷ 配偶者が出産した男性従業員数 × 100 で計算されるのが原則です(育児・介護休業法に基づく計算方法)。

ただし、企業によって「配偶者出産休暇(特別休暇)」「育児目的の短時間勤務」「配偶者同行休暇」なども取得率に含めて計算しているケースがあり、法律上の育児休業(最短1日〜)と実質的に長期間取得した育休は意味がまったく異なります。


「高取得率」の落とし穴

①1日〜数日の取得が含まれている

育児休業は法律上1日から取得可能です。取得率100%と書いてあっても、実際は全員が1〜3日だけ取得したに過ぎないケースがあります。取得率と合わせて「平均取得日数」を必ず確認してください。平均取得日数が5日未満の場合は、実態として育休文化が根付いているとは言いにくいです。

②分母が小さい年は数字がブレる

従業員数が少ない企業や、その年に配偶者が出産した男性が少なかった年は、1人の取得・不取得で取得率が大きく変動します。単年の数字より、3〜5年のトレンドで見ることが重要です。

③特別休暇(育児目的外)を含めて計算している

「配偶者出産休暇(2〜5日程度)」は育児休業ではなく会社独自の特別休暇ですが、これを育休取得率に含めて集計している企業があります。開示の脚注・注釈を確認する必要があります。


有報・データベースで確認できる情報

2023年以降、有価証券報告書には人的資本開示の強化に伴い、男性育休取得率の開示が義務付けられました(上場企業)。また、厚生労働省の女性活躍推進企業データベースでは、企業が自主申告した育休取得率・平均取得日数を検索できます。

本サイトでは、各企業ページで男性育休取得率を確認できます。ただし有報ベースの数値であり、平均取得日数は企業によって別途開示の要否が異なります。


本当に育休が取れる会社の見極め方

  • 取得率だけでなく平均取得日数を確認する:30日以上が望ましい目安。14日未満は短期取得中心の可能性が高い
  • 育休取得後の復職率・昇格率を見る:育休取得者の昇格率が非取得者と変わらないかどうかが文化の実態を示す
  • くるみん認定の有無:厚生労働省の「くるみん」は男性育休取得率10%以上(プラスくるみんは30%以上)が認定要件のひとつ。取得率だけでなく取組み全体を評価した認証
  • 管理職の育休取得実績を問う:面接・OB訪問で「上司が実際に育休を取っているか」を聞くのが最も実態に近い確認方法

業界別の男性育休取得率の傾向

業界によって男性育休取得率には大きな差があります。

  • 取得率が高い傾向:IT・情報通信(テレワーク普及)、金融・保険(女性活躍推進が先行)、電機・精密
  • 取得率が低い傾向:建設(現場中心・2024年問題で状況変化中)、飲食・サービス(人員余裕が少ない)、運輸・物流

業界平均と比較することで、同業他社と比べてその企業が育休取得を推進しているかどうかが相対評価できます。


まとめ

  • 男性育休取得率は、分母・分子の定義と平均取得日数をセットで確認する
  • 取得率100%でも1〜3日のみ取得の場合は実質的な育休文化とは言えない
  • くるみん認定・復職後の昇格率・管理職取得実績が実態を示す補完指標になる
  • 業界平均との比較で、企業の相対的な積極性を判断する