企業分析NOTE

連結と単体の従業員数・年収はなぜ違うのか|有報の読み方

有価証券報告書には「連結ベースの従業員数」と「単体(提出会社単体)の従業員数・年収」の両方が記載されています。この2つの数字が大きく異なる場合があり、意味を理解せずに比較すると誤った判断につながることがあります。


「連結」と「単体」の違い

連結(連結ベース)とは、親会社と、親会社が実質支配している子会社・関連会社すべてを合算した数値です。グループ全体の規模を示します。

単体(提出会社単体)とは、有報を提出している法人(≒上場親会社)のみの数値です。子会社の従業員は含まれません。

有報の「従業員の状況」欄では、連結従業員数(セグメント別)と単体従業員数(平均年齢・勤続年数・年収付き)が別々に記載されています。年収データは単体のみ開示されており、連結ベースの年収は有報からは直接わかりません。


単体年収が「実態より高い」ケース:持株会社問題

グループの純粋持株会社(ホールディングス)が上場している場合、単体の従業員数は数十〜数百人にとどまることがあります。この場合、単体の「従業員」はほぼ全員が管理職・本社機能に限定されるため、年収が実態より大幅に高く見えます。

具体例として、連結従業員が50,000人いるグループ持株会社の単体従業員が200人だとすると、その200人は全員が役員直下のエリート層である可能性が高く、平均年収1,000万円超になることもあります。実際に子会社に就職した場合の年収はまったく別の水準です。

持株会社かどうかは、企業名に「ホールディングス」「HD」「グループ」などが含まれているか、または「事業の内容」欄で実事業を行っていない(純粋持株会社と記載されている)かで確認できます。


単体年収が「実態より低い」ケース

逆のパターンとして、単体年収が実態より低く見えるケースもあります。

  • パート・アルバイトを多数含む場合:小売業・外食・サービス業で多く見られます。フルタイム換算すると実態に近い数字になりますが、有報の平均年収は全従業員の単純平均のため引き下げられます
  • 海外子会社に優秀層を出向させている場合:高年収の人材が単体帳簿から外れ、単体平均年収が下がることがあります
  • 製造・物流を子会社に分離している場合:親会社の単体は営業・管理職中心となり、年収水準が高く見える一方、実際に多数の従業員が在籍する子会社の年収は別の水準

本サイトのデータの位置付け

本サイトが掲載している平均年収は、有価証券報告書「従業員の状況」の提出会社(単体)ベースの数値です。連結グループ全体の年収水準ではありません。

各企業ページの「グループ全体」欄では連結従業員数を参照できますが、年収はあくまで単体データです。持株会社や従業員数が極端に少ない会社(数十〜数百人)の年収は特に注意してください。


正しく使うためのチェックリスト

  • 社名に「ホールディングス」がつく場合は持株会社である可能性が高い → 主要事業子会社の年収を別途確認
  • 単体従業員数が連結の10%未満の場合は、単体年収が実態を反映していない可能性がある
  • パート・アルバイト比率が高い業種(小売・外食・ホテル)は平均年収が低く見えがち
  • 就活・転職で入社する予定の法人(子会社か親会社か)を特定してから年収データを参照する